2020年4月11日土曜日

我々はダイヤモンド・プリンセスに何を見たのか?

我々日本人とコロナ肺炎との出会いは、ダイヤモンド・プリンセス号に始まりました。

ダイヤモンド・プリンセス号は、米プリンセス・クルーズが運用する大型クルーズ客船。2004年の就航以来、夏はアラスカ、冬はアジアを中心に運航していました。
同船は乗客を乗せて1月20日横浜港を出発し、鹿児島、香港、ベトナム、沖縄那覇を巡り、2月4日に横浜港に帰港する予定でした。

那覇を出て翌日横浜に入港するという直前に、香港で下船した乗客の1人が新型コロナウイルスに感染していたことが判明しました。
 ダイヤモンド・プリンセス号は乗客2666人、乗務員1045人、計3711人を乗せ、横浜港に到着。
 この香港人。90歳の爺さん。何を思ったのか、わざわざ香港から横浜に来て横浜からこの船に乗ったそうです。そして香港で下船しました。
 明日、横浜入港でこのクルーズも終わり、という時に、この香港人のおじいさんがコロナ肺炎にかかっていたという連絡が入ったわけです。



 同日午後、運営会社のプリンセス・クルーズは下船延期を決定。5日、ダイヤモンド・プリンセス号内で10人の新型コロナウイルス感染者を確認した日本当局は、乗員乗客を19日までの14日間、船内で待機させ、検疫を行うと発表しました。

 この時、我々は武漢ウイルス肺炎に関して以下のような情報を持っていたのではないでしょうか。

1)感染力はものすごく強くあっという間に感染するようだ。

2)ただ致死率は高くはない。病気を持った高齢者はハイリスク。武漢コロナウイルス肺炎にかかり死亡するのは高齢者ばかり。40歳くらいまでの若者は大丈夫なようだ、ということ。

3)どちらにしても人間はこのウイルスに対する免疫をもっていないということ。故に感染すると非常にまずいということ


当時の武漢の様子


 さて、検査が始まりました。
 政府は、体調の悪い人に検査をして、きっと陽性者はいないだろうから、それで全員下船させると良いとタカをくくっていたそうです。

 あとはよく我々が毎日テレビで見ていた通り。
 まず、発熱している人や体調の悪い人三十人にPCR検査を行ったが、何と10人に
陽性と出ました。
 もっともPCR検査は手のかかる検査です。当時は三十人くらいが関の山でした。

 焦る政府は、さらに症状のある人、ないし、この陽性者と接触のある人30 − 50人くらいに検査をしました。するとまた、10 - 20人くらいの陽性者が出ました。

 あとは検査をするたびに感染者が積み上がっていき、その都度、感染者は下船し、白い防護服に包まれた人に車やバスで病院に連れて行かれました。これも我々が毎日毎日テレビで何度も見た通りです。

 病院で死亡例も報告されました。

 結局、3711人の乗員のうち感染者712人あまり(全員に検査が行われたわけではない)。死亡者は11人でした。現在、人工呼吸または集中治療室にて入院治療をしている人は8名(令和2年4月8日の状況)

《上表》陽性者が日々に増えていった
クルーズ船で何が起きた


《上表》出典:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年4月9日版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10770.html

 これを見て我々はいろいろ学びました。
 なるほど。中国からもたらされた情報通りだ、と。

 A) すごい感染力。もともと武漢肺炎に感染した人は船内で香港人一人であったものが、ここまで感染が広がったのか、と。

 B) 未知のウイルスだから看病にも手がかかる。重厚な防護服に身を包み診療に当たらなければならない。外にウイルスが漏れないように陰圧室に入院させる必要がある。このような部屋はなかなかない。

 C) やはり亡くなる方もおられるのだな、と。

という感じではないでしょうか。



ダイヤモンド・プリンセス号の陽性者を病院に搬送するための大型バス。
最初は救急車で搬送していたが、間に合わなくなり、中盤からバスで搬送するようになった。

 これを、先の東京の1日の感染者184人を受けて・・・PCR検査とは何か」に載せた考え方で見てみると・・・まったく違うものが見えてくるのではないでしょうか。

イ)PCR検査はあまり精度の高い検査とは言えない。
 感度、特異度は70%程度と推測すると・・・
 何でもない人に施行しても3割程度が陽性と出る。 

 こう考えると、最初に三十人ほど検査をした。この三十人は肺炎にかかっていなくても十人くらい陽性と出る。実際、十人ほど陽性となった。
 そのあと、検査が何度か施行されたが、その都度、このように2−3割の人に陽性と出た。この検査の感度、特異度を考えると、これはひょっとしたら当然の結果だったのかもしれない。
 もちろんこの中に、実際にコロナ武漢肺炎であった方はいらっしゃる。
 実際に11人亡くなっている。この中には武漢コロナ肺炎であった人もいるであろう(もちろん全員が武漢肺炎であったわけではないであろう)

ロ)武漢コロナ肺炎は、高齢者で発症、重篤化しやすく、若年者では、無症候の人が多く、発症しても軽度の人が多い、と言われているが・・・・

 このクルーズ船。乗客はやはり退職された方が多い。故に、乗客の年齢も高くなる。
 この休日もない普通の時期にこのような船に乗って旅行できる方はそのような方が多くなるであろう。
 また、ゴールデンウィークでもお正月でもなく、連休もないこの時期は、クルーズ船の料金が安いのである。
 リタイアされた方はこの時期にクルーズ船での旅行を楽しむものである。
 料金は、窓のない船室が15万円。窓のある部屋が30万円ほどだったという。 
 2週間ほど3度の結構贅沢な食事が出て、ショーもいろいろ楽しめて、あちこちの観光地を回ることができるとしたら、お値段的にも魅力である。

 まあ、このクルーズ船には比較的年齢の高い方が多く乗っているので、か「感染者」の年齢を見ても実際に高い。このような年齢の人しか乗っていないのである。

 あと、これを「武漢コロナ肺炎」と特別なものと見てしまうと何も考えられなくなる。

 ここは、普通の「肺炎」と見るとどのようなことが言えるであろうか。

 やはり、肺炎にかかったら高齢で、体力も抵抗力も若年者より落ちる方が重篤化しやすいであろう。成人病を持っている方も多いのでそのような人はさらに重篤化しやすくなるのも当然である。何もコロナ肺炎に限ったことではない。

ハ)11名の死亡例が出たが・・・
 コロナ肺炎でお亡くなりになった方ももちろんいらっしゃるが、全員ではないと私は考える。
 検査をするたびに「感染者」(陽性者)が増えて、何らあたかも逃げ場のない密閉された船中で病魔が次々と人を飲み込んでいっているかのように思えたであろう。
 食事を配るフィリピン人船員が感染者だったという。それで食事を配る際に多くの人にウイルスを移してしまった、とも言われている。
 コロナウイルス。感染力はベラボーに強いと聞いている。
 とにかくちょっとした不始末で感染してしまうのだ。

 このような状況で船内にいる人には異様なプレッシャーがかかっていたと思う。
 人間はプレッシャーに存外弱いものである。
 それで命を落とすことも稀ではないのだ。
 また、ご高齢の方も多いし、持病をお持ちの方も多い。 
 そのような事から、亡くなることも稀ではない。
 
 クルーズ船では船医を募集している。もちろん船の中には船医が常駐している。
 私が聞いたところでは彼らの主な仕事は「死亡診断」であるという。
 船の中には死体を安置する冷蔵室もあるのである。
 実際にクルーズの途中に亡くなる方も稀ではないのだ。

 長くなってしまったがここで申し上げたいことは、死亡した十一人すべてが、武漢コロナ肺炎が原因であったと考えるべきではないということである。

 このような考え方は奇抜でしょうか。

結論
 しかし、我々はダイヤモンド・プリンセス号を海に浮かぶ巨大な盃(さかづき)と考えると、その中に我々は蛇(コロナ)の影をあの時に見ただけではないでしょうか。
 そして今、非常に具合が悪くなっている。
 まさに「杯中の蛇影」の状況に陥っているだけなのかもしれません。

私はコロナが大したことはないというつもりは決してない。
 コロナ肺炎は確かに存在する。
 そして人類はこのウイルスに対する抗体を獲得していないし、もちろん、ワクチンも治療薬もない。
 この新しい感染症に対して我々は最大限の注意を払い、予防に努めなければならない。
 ただ、正しく恐れなくてはいけない、ということ。
 PCR検査陽性だったから、と言って、これを「感染者」とみなして、全て入院治療の対象にしてしまってはいけない。
 この中には多数の「偽陽性」の人がいる、というか大多数が偽陽性なのである。
 我々は、「杯中の蛇影」に怯えているだけである。

 PCR検査陽性だったら、まずは自宅での自主隔離。
 無症状者はもちろんこれで良い。今までの流れを踏まえる約2週間くらいこのようにすれば良い。
 軽症者も同様である。
 このような人まで入院していたら、すぐに病院がパンクする。

 大方の人はこのようにして何でもない状況となる。
 もともと、コロナ肺炎ではないのだから。

 しかし、中には、症状がだんだん厳しくなってくる人もいる。
 このような人を入院治療の対象としていくべきだろう。

 具体的に言えば、自宅療養か入院か、というのは、インフルエンザの対応と同様か、やまり未知の病気ですから、自宅療養の期間を多少長めにやるくらいで良いと思う。

 とにかく、むやみなことをやって医療崩壊を避けなければならない。これが現段階でもっとも大事なことであろう。



註)杯中蛇影 はいちゅう の だえい
疑う気持ちが強くなると、つまらないことでも過剰に気になり病んでしまうことのたとえ。
『晋書・楽広伝』にある以下の故事に基づく。
晋の楽広という人物の友人が楽公の部屋で酒を飲んでいたとき、杯に映った影を見て蛇と思い込み、その酒を飲んだことを気にして病気になった。
それを聞いた楽公が友人に「それは蛇ではなく、弓の影が映っていただけだ」と言うと、たちまち病気が治ったという。
「杯中」は「盃中」とも書く。
「蛇影」は「じゃえい」とも読む。

(『晋書』「楽広伝」) 

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