2020年6月3日水曜日

武士道 第5章 仁・惻隠の心 第45講

CHAPTER V
BENEVOLENCE, THE FEELING OF DISTRESS

第45講
1) LOVE, magnanimity, affection for others, sympathy and pity, were ever recognised to be supreme virtues, the highest of all the attributes of the human soul. 

2) It was deemed a princely virtue in a twofold sense: princely among the manifold attributes of a noble spirit; princely as particularly befitting a princely profession. 

3) We needed no Shakespeare to feel--though, perhaps, like the rest of the world, we needed him to express it--that mercy became a monarch better than his crown, that it was above his sceptered sway. 

4) How often both Confucius and Mencius repeat the highest requirement of a ruler of men to consist in benevolence. 

5) Confucius would say,--"Let but a prince cultivate virtue, people will flock to him; with people will come to him lands; lands will bring forth for him wealth; wealth will give him the benefit of right uses.   Virtue is the root, and wealth an outcome.”


現代英文訓読法で
















一文ずつ解説




1
私の訳:他人に対する愛、寛容、愛情、同情と憐憫は、最高の徳であるとかつて認められていた。則ち人間の魂のすべての属性の中で最も高いものとかつて認められていた。

attribute /ətrɪ́bjət|ətrɪ́bjuːt/ (!動詞名詞で強勢が異なる)
〖at(…に) tribute(与える)〗
動詞~s /-ts/ ; ~d /-ɪd/ ; -uting
他動詞
〖attribute A to B〗A〈物事(の結果)〉をB〈人物事〉に帰するAをBのせいにするA〈性質特徴など〉がB〈人物など〉にあるとする[考える](⦅かたく⦆ascribe)
▸ attribute one's failure to bad luck
失敗を運が悪かったためとする
▸ His death was attributed to lung cancer.
彼の死因は肺癌(がん)であるとされた.
〖通例be ~d to A〗〈作品などが〉A〈作者〉の作であると考えられている.
名詞 /ǽtrɪbjuːt/ (!分綴はattribute) C
(人物などの本来的な)属性特性, 特質 (!特に好ましい有益な性質をさす) .
象徴, 付属物.
〘文法〙限定詞(→some形容詞1文法).

magnanimity /mæ̀ɡnənɪ́məti/
名詞複-ties
U度量の大きいこと, 寛大さ, 太っ腹; Cそのような行為.

ever /évər/
〖原義は「いつでも(always)」〗
副詞比較なし (!通例一般動詞の前, be動詞最初の助動詞の直後に置く) 【いまだかつて】
〖疑問文で〗(過去について)これまでにかつて, いつか(↓コーパスの窓); (現在について)いつもふだん; ⦅主に話⦆(未来について)これから先, いつか(at any time)
▸ Have you ever been to Spain?
スペインに行ったことがありますか (!具体的な経験の有無を尋ねる; 肯定の返事はYes, I have. やYes, once [for a week two years ago]. (はい, 1度[2年前に1週間]行ったことがあります)とし, ╳Yes, I have ever been there. のようにeverを用いない(↓語法のポイント). 否定の場合はNo, I haven't. やNo, never. のように答える; 現在すでにスペインに来ている人に対してはHave you been here before?を使う)
▸ Have you ever thought of getting married? ≒Did you ever think of getting married?
結婚しようと思ったことがありますか(↓コーパスの窓)
▸ “Do you [⦅くだけて⦆D'you] ever play tennis?” “I often [rarely] do.”
「ふだんテニスをしますか」「よくします[めったにしません]」 (!現在形で習慣的行為の頻度を尋ねる; 具体的な頻度で答える)
▸ Do you ever wish you could be someone else?
ほかの人間になってみたいと思うことがありますか
▸ Will you ever be coming to Australia?
いつかオーストラリアにいらっしゃる予定がありますか (!未来形で用いるのは⦅主に話⦆)
▸ Can you ever forgive me?
もう私を許してくれるのかい.

矢内原忠雄訳: 1) 愛、寛容、愛情、同情、憐欄は古来最高の徳として、すなわち人の霊魂の属性中最も高きものとして認められた。


2
私の訳:それは2つの意味において王者の徳であると考えられた。ひとつは、高貴な精神の多くの属性の間において王者的であるということ。もうひとつは、王者という職業に特にふさわしいものとして王者的である、ということである。

意味がうまく取れない文章である。

deem /diːm/
動詞~s /-z/ ; ~ed /-d/ ; ~ing
他動詞
⦅かたく⦆ (!進行形にしない) 〖~ A (to be [as]) C〗A〈事物人〉をCと考える, 見なす(consider), 判断する (!Cは形容詞名詞) ; 〖~ (that)節〗…であると考える, 思う
▸ Our project was deemed a great success
我々の計画は大成功と見なされた
▸ He deems it necessary to do so.≒He deems (that) it is necessary …
彼はそうすることが必要だと考えている.

príncely
形容詞〖名詞の前で〗
1 相当な〈金額など〉 (!実際の金額が少額でもおどけて使う場合がある) .
2 ⦅かたく⦆立派な, 豪勢な; 気前のよい.
3 王子の, 王子にふさわしい; 気品のある.
副詞
気品よく; 立派に; 王子らしく.

twofold /túːfòʊld/
形容詞⦅かたく⦆
1 〖名詞の前で〗2倍の, 二重の.
2 2要素[部分]から成る.
副詞
⦅かたく⦆2倍に, 二重に.

befítting
形容詞
«…に» ふさわしい, (似)合っている «to» .
~ly
副詞
befit /bɪfɪ́t/
動詞→fit1
他動詞
1 ⦅かたく⦆〈物事が〉〈立場状況名前など〉に相応する, 適する; 似合う.
2 …の務めである.
as befíts A
A〈人物〉にふさわしく.

manifold /mǽnɪfòʊld/
形容詞⦅かたく文⦆
1 多数の, 多種の.
2 多方面にわたる.
名詞
C〘機〙多岐管, マニホールド〘車のエンジンのガス吸入排出管をまとめたもの〙.

profession /prəféʃ(ə)n/
→profess
professional
名詞複~s /-z/
1 C(高度な教育訓練を必要とする)職業, 専門職〘聖職者医師弁護士教師技術者作家など〙; (一般に)職業(→work 1類義)
enter [leave] the profession
職業に就く[をやめる]
▸ I'm an engineer by profession.
私の職業は技師です
▸ Teaching was my chosen profession.
教職が私の選んだ職業だった
▸ the oldest profession
⦅おどけて⦆世界最古の職業 (!売春(prostitution)のこと) .

attribute /ətrɪ́bjət|ətrɪ́bjuːt/ (!動詞名詞で強勢が異なる)
〖at(…に) tribute(与える)〗
動詞~s /-ts/ ; ~d /-ɪd/ ; -uting
他動詞
1 〖attribute A to B〗A〈物事(の結果)〉をB〈人物事〉に帰する, AをBのせいにする; A〈性質特徴など〉がB〈人物など〉にあるとする[考える](⦅かたく⦆ascribe)
attribute one's failure to bad luck
失敗を運が悪かったためとする
▸ His death was attributed to lung cancer.
彼の死因は肺癌(がん)であるとされた.
2 〖通例be ~d to A〗〈作品などが〉A〈作者〉の作であると考えられている.
名詞 /ǽtrɪbjuːt/ (!分綴はattribute) C
1 (人物などの本来的な)属性, 特性, 特質 (!特に好ましい有益な性質をさす) .
2 象徴, 付属物.
3 〘文法〙限定詞(→some形容詞1文法).

矢内原忠雄訳: 2) それは二様の意味において王者の徳と考えられた。すなわち高貴なる精神に伴う多くの属性中王位を占むるものとして王者的であり、また特に王者の道に適わしき徳として王者的であった。


3
私の訳:慈悲は王冠よりも王者に似合う、とか、慈悲は王の政柄以上である、ということを表現するために我々はシェークスピアを必要としたが、そのことを感じるためにシェークスピアを必要とはしなかった。

rest2 /rest/
〖re(後ろに)st(立つ)〗
名詞
1 〖the ~ (of A); 単数扱い〗(Aの)残り(の部分)(remainder) (!Aは単数形名詞)
▸ I want to spend the rest of my life here.
余生はここで過ごしたい
the rest of the world
(自国以外の)他の国々
▸ I took a bus the rest of the way.
それから先はバスに乗った
▸ Once you're in right with the politicians, the rest is easy.
いったんその政治家たちに気に入られれば後は簡単だ.
2 〖the ~ (of A); 複数扱い〗残り(のA〈人物〉); そのほか(のA〈人物〉) (!Aは複数形名詞)
▸ Three of us will go; the rest are to stay at home.
我々のうち3人が出かけて残りは家にとどまることにしよう
▸ I'll tell the rest when I see them.
ほかの人たちには今度会った時に伝えましょう.

mercy /mə́ːrsi/
〖語源は「(神の与える)報酬」〗
merciful, merciless
名詞複-cies /-z/
1 U(罪人敵弱者に対する)慈悲, あわれみ, 情け(compassion); 寛大(clemency); 慈悲深い行為
▸ Lord, have mercy on us all.
神よ我らに御慈悲をたまわれんことを
▸ The government will show no mercy to anyone resorting to violence.
政府は暴力に訴える人には容赦することはないだろう
ask [beg, plead] for mercy
慈悲を請う
▸ without mercy
情け容赦なく.

monarch /mɑ́(ː)nərk|mɔ́n-/ (!-chは /k/ )
〖mono(1人で)arch(支配する人)〗
名詞複~s /-s/ C
1 君主, 国王, 皇帝
▸ a constitutional [an absolute] monarch
立憲[専制]君主.
2 ⦅比喩的に⦆, 王者
▸ the monarch of the glen
谷間の王〘雄ジカのこと〙
▸ Mont Blanc is the monarch of mountains.
モンブランは山の王だ.

scéptered⦅英⦆-tred
形容詞
(しやく)を持った; 王権を握った.

sway /sweɪ/
名詞複~sU
1 揺れ; ゆらぎ, 動揺
▸ the gentle sway of the train
列車の緩やかな揺れ.
2 ⦅文⦆ «…に対する» 支配(), 統治; 勢力, 影響() «over»
hold sway over the company
会社を牛耳る
under the sway of A
Aの支配下に.

become /bɪkʌ́m/
〖「来る」>「…(の状態)になる」〗
動詞~s /-z/ ; became /-kéɪm/ ; ~; becoming
他動詞⦅かたく⦆ (!進行形受け身にしない)
1 〈服色などが〉〈人〉に似合う(suit) (!look good [nice]の方が普通; →look自動詞3a,good形容詞4d)
▸ The hat really becomes you.
その帽子はあなたによくお似合いですね.
2 〈行為などが〉〈人〉にふさわしい
▸ It doesn't become you to behave like that.
そのようにふるまうのは君らしくない.

矢内原忠雄訳: 3) 慈悲は王冠よりも善く王者に似合うとか慈悲は王笏(おうしゃく)をもってする支配以上であるとか、これを言葉に表現するにはシェイクスピアを必要としたが、これを心に感ずるにはあえて彼を要せず、世界各国民皆これを知ったのである。


4
私の訳:孔子と孟子は仁の中に含まれている人間を治めるにあたりもっとも高度に要求されるものを繰り返し何ども述べている。→孔子と孟子は人間を治めるにあたりもっとも高度に要求されるものは仁の中に含まれているということを繰り返し述べている。

requirement /rikwáɪərmənt/
→require
名詞複~s /-ts/ C
1 ⦅かたく⦆〖しばしば~s〗(人物に)必要な物[事], 必需品
▸ minimum system requirements
(コンピュータの)最低限必要なシステム構成.
2 (大学会社などでの義務として)要求される物[], 必要条件[要件], 資格
meet [fulfill, satisfy] the requirements
必要条件を満たす
▸ entry [admission] requirements
入学資格
▸ legal requirements
法的条件.

矢内原忠雄訳: 4) 孔子も孟子も、人を治むる者の最高の必要条件は仁に存することを繰り返した。



5
私の訳:孔子曰く、君子にはただ徳を修めさせよ。人々は彼に集まリついていくだろう。人々とともに王の所に土地が来るだろう。土地は王に富をもたらすだろう。富は正しく運用すれば王に恩恵を与えるだろう。徳は根本であり、富は結果である。

訳に当たって:
princeを何と訳すべきなのか。これは「大学」という四書五経の中の一節であり、新渡戸がこれを引用して英訳したものである。「大学」の中で、「君子」とは人間修行、学問を積んで道理を分かった人間、ということになっている。もちろん、人民の上に立つ、皇帝や王、県令などの地域高官は「君子」であって欲しいと皆が願っている。孔子もこのことを再三述べている。
 しかし、権力は腐敗する。Power corrupt.は世の常。
 堕落して、人民に人食い虎よりも害をなす例も珍しくはない。昔も今もである。

 
 「君子」だからといって、何らかの権限があるわけではない。
 したがって、この文章では、やはり「権力ある人」つまり、王権を持った王が徳のある君子であれば・・という話をしているのであるから、princeを「王」と訳した。そうした方が英訳としては、すんなり来るのではないだろうか。

cultivate /kʌ́ltɪvèɪt/ (!強勢は第1音節)
〖cult(耕作)ate(行う)〗
動詞~s /-ts/ ; ~d /-ɪd/ ; -vating
他動詞
1 〈人が〉〈土地〉を耕す, 耕作する; ⦅かたく⦆〈作物〉を栽培する, 〈魚貝など〉を養殖する, 〈細菌など〉を培養する(grow)
cultivate a garden
庭を耕す
cultivate rice [plants]
米[植物]を栽培する.
2 〈人が〉〈技能品性態度など〉を養う, みがく, 高める; 〈学問など〉にはげむ; 〈文芸など〉に親しむ; 〈人〉を教化する
cultivate an image
イメージを高める
cultivate common interests
共通の関心を高める.
3 〈人が〉〈友情など〉を育む[深める]; 〈人〉と親交を結ぶ (!時に利己的要素を暗示)
cultivate relations with local leaders
地元有力者との関係を深める.

but /bət, ⦅強⦆bʌt/
〖「…無しに, …を除いて」>「しかし」〗
副詞
1 /bət/ ⦅主に文古⦆ほんの, ただ(only); つい, たった(just); 〖can, couldと共に〗とにかく(in any case), 少なくとも(at least)
▸ I heard it but now.
たった今聞いたところだ
▸ It's probably hopeless. Still, she can but try.
恐らく絶望的だろうが, 彼女はとにかくやってみることだ.
2 ⦅米話⦆まったく, ほんとに; しかも (!副詞を強調) .

flock1 /flɑ(ː)k|flɔk/
〖原義は「(人の)群れ」〗
動詞
自動詞
«場所人に/…するのに» 集まる, 群れをなす; 群れをなして行く[来る] «to, into, around/to do» (!通例副詞前置詞不定詞を伴う)
▸ Tourists flocked to the island to see the natural wonder.
観光客がその島にすばらしい自然を見ようと押しかけた.

benefit /bénɪfɪt/ (!強勢は第1音節)
〖bene(良い)fit(行い)〗
beneficial
名詞複~s /-ts/
1 U利益, 利得; 利点, 特典;恩恵; 成果 (!(1)具体例ではa ~/~s; その際しばしば修飾語を伴う. (2)主に金銭面を強調するprofitと違い, 得になること全般をさす)
have the benefit of education
教育の恩恵を受ける
reap the benefit of hard work
懸命に働いた成果を手にする
▸ The scheme would be of benefit to poor people.
その計画は貧しい人々のためになるであろう
▸ It will be to your benefit to study hard.
一生懸命勉強することはあなたのためになる
▸ get benefits from the experience
その経験から利益を得る
▸ economic benefits for residents
住民のための経済的利点.
2 C〖制度自体をさす場合は不可算〗
a. ⦅主に英⦆(社会的弱者に対する)公的補助金, …手当
▸ be on unemployment benefit
失業手当で暮らす.
b. ⦅主に米⦆〖通例~s〗(保険制度福利厚生による)給付金, 諸手当; 余得
▸ health [welfare] benefits
健康[福祉]保険(給付)
▸ provide retirement [tax] benefits
退職金を支給する[減税する].

outcome /áʊtkʌ̀m/
〖out(外に)come(出てくるもの)〗
名詞複~s /-z/
C〖通例単数形で〗【会議活動などの】(最終的な)結果, 結論, 成果 «of» (→result類義)
▸ We cannot predict the outcome of the election.
選挙の結果は予想できない
▸ the (most) likely outcome
(一番)起こりそうな結果
▸ determine [influence] the outcome
結果を左右する.

benefit /bénɪfɪt/ (!強勢は第1音節)
〖bene(良い)fit(行い)〗
beneficial
名詞複~s /-ts/
1 U利益, 利得; 利点, 特典;恩恵; 成果 (!(1)具体例ではa ~/~s; その際しばしば修飾語を伴う. (2)主に金銭面を強調するprofitと違い, 得になること全般をさす)
have the benefit of education
教育の恩恵を受ける
reap the benefit of hard work
懸命に働いた成果を手にする
▸ The scheme would be of benefit to poor people.
その計画は貧しい人々のためになるであろう
▸ It will be to your benefit to study hard.
一生懸命勉強することはあなたのためになる
▸ get benefits from the experience
その経験から利益を得る
▸ economic benefits for residents
住民のための経済的利点.

矢内原忠雄訳: 5) 孔子日く、「君子はまず徳を慎しむ、徳有ればこれ人有り、人有ればこれ土有り土有ればこれ財有り、財有ればこれ用あり、徳は本也、利は末也」と『大学』。








現代英文訓読法 目次 (新渡戸稲造 武士道もここにあります)


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