34講
25) Because of this very artificiality, Giri in time degenerated into a vague sense of propriety called up to explain this and sanction that,--as, for example, why a mother must, if need be, sacrifice all her other children in order to save the first-born; or why a daughter must sell her chastity to get funds to pay for the father's dissipation, and the like.
26) Starting as Right Reason, Giri has, in my opinion, often stooped to casuistry.
27) It has even degenerated into cowardly fear of censure.
28) I might say of Giri what Scott wrote of patriotism, that "as it is the fairest, so it is often the most suspicious, mask of other feelings."
29) Carried beyond or below Right Reason, Giri became a monstrous misnomer.
30) It harboured under its wings every sort of sophistry and hypocrisy.
31) It would have been easily turned into a nest of cowardice, if Bushido had not a keen and correct sense of courage, the spirit of daring and bearing.
現代英文訓読法で
25
私の訳:このまさに人為的なものであるが故に義理はやがてこのことやあのことの是認を説明するために呼び出されるあいまいな正当性の感覚に変質したーーー例えば、何故母親は必要とあらば長男を助けるためにすべての彼女の子供たちを犠牲にしなければならないのか、あるいは、何故娘は父親の放蕩などのために払うべき資金を得るために操を売らなくてはならないのか、という様なことである。
artificiality /ɑ̀ːrtəfɪ̀ʃiǽləti/
名詞複-ties
U人工[人為]的なこと; 不自然さ, わざとらしさ; C人工物, 模造品.
degenerate /dɪdʒénərèɪt/
動詞
自動詞
1 «…から/…へ» 悪くなる, 堕落する, 退歩する «from/into» .
2 〘生物〙退化する; 〘医〙〈組織器官が〉変性[変質]する.
propriety /prəprá(ɪ)əti/
名詞複-ties⦅かたく⦆
1 U礼儀(正しさ), 作法; たしなみ.
2 U適切[妥当]さ; 正当性.
3 C〖the -ties〗礼儀作法.
vague /veɪɡ/ (!-a-は /eɪ/ , -gueは /ɡ/ )
〖語源は「放浪の」〗
形容詞~r; ~st
1 〈考え感情言葉などが〉漠然とした, はっきりしない, 不明確な; 〖be ~〗〈人が〉 «…について» (わざと)はっきり言わない «about, on»
▸ a vague sense of unease
漠然とした不安感
▸ I have only a vague memory of my grandparents.
私は祖父母のことはぼんやりとした記憶しかない
▸ Tom was vague about the details.
トムは詳細について言葉を濁した.
sanction /sǽŋ(k)ʃ(ə)n/
〖語源は「神聖にすること」〗
名詞複~s /-z/
1 C〖通例~s〗【国などへの】(政治的な意図を持った)制裁(措置) «against, on»
▸ apply [take] economic [trade] sanctions
経済[貿易]制裁を加える
▸ impose [lift, remove] sanctions against India
インドへの制裁を課す[解除する].
2 U⦅かたく⦆(公式な)認可, 承認, 是認
▸ receive official sanction
公的許可を受ける.
3 C⦅かたく⦆(法律などに従わせるための)処罰; (道徳的社会的)拘束力
▸ legal sanctions
法的処罰.
動詞
他動詞⦅かたく⦆
1 〈権限を持つ人などが〉(公式に)〈行動実行〉を認可する, 承認する.
2 〈国家権限を持つ機関が〉 «…をしたことで» 〈国人〉に制裁措置をとる «for doing» .
chastity /tʃǽstəti/
名詞U
1 貞操, 純潔, 清純.
2 (文体などの)簡素さ, 上品さ.
dìssipátion
名詞U⦅かたく⦆
1 (雲霧煙熱などの)消散, 消失.
2 (酒などによる)快楽(生活), 放蕩(ほうとう), 道楽三昧.
3 (金銭時間精力などの)浪費.
4 娯楽, 気晴らし.
in tíme
1 «…するのに/…に» 間に合うように «to do/for»
▸ I tried to get home in time to see [for] the TV show.
私はそのテレビ番組が見られる時間までに帰れるようにした.
2 〖(just) in ~〗(ちょうど)間に合って.
3 やがては, そのうちに.
4 【音楽に/演奏者に】調子[リズム]を合わせて «to, with/with» (↔out of time).
矢内原忠雄訳: 25) 正にこの人為性の故に義理は時をへるうちに堕落して、この事かの事 ーー 例えば母は長子を助けるために必要とあらば他の子どもをみな犠牲にせねばならぬのは何故であるか、もしくは娘は父の放蕩の費用を得るために貞操を売らねばならぬのは何故であるか等々を、説明したり是認したりする時によびだされる漠然たる妥当感となったのである。
26
私の訳:義理は「正義の道理」として始まったが、「義理」は、私の考えでは、しばしば詭弁に屈服してしまった。
casuistry /kǽʒuəstri|kǽzjuɪstri/
名詞U
1 ⦅かたく⦆詭弁(きべん)(sophistry), こじつけ.
2 〘哲〙決疑論.
stoop1 /stuːp/
動詞~s /-s/ ; ~ed /-t/ ; ~ing
自動詞
1 〈人などが〉身をかがめる, (前に)かがむ(down, over)
▸ stoop to pick up the tray
トレーを取ろうと身をかがめる.
2 〈人が〉恥ずべきことをする; 〖~ to doing/A〗…するまで[Aまで]身を落とす[落ちぶれる]
▸ stoop to cheating
身を落としていんちきまでする
▸ stoop so low (as to do)
⦅かたく⦆(…といった)さもしいことをする.
3 〈人などが〉(姿勢が)前かがみである, 腰が曲がっている, 猫背である.
4 〈タカなどが〉(空から) «…に» 飛びかかる «at, on» .
他動詞
〈頭肩背など〉をかがめる, 曲げる(→分詞stooped).
矢内原忠雄訳: 26) 私見によれば、義理は「正義の道理」として出発したのであるが、しばしば決疑論に屈伏したのである。
27
私の訳:義理は臆病にも非難を恐れて退化さえしてしまった
degenerate /dɪdʒénərèɪt/
動詞
自動詞
1 «…から/…へ» 悪くなる, 堕落する, 退歩する «from/into» .
2 〘生物〙退化する; 〘医〙〈組織器官が〉変性[変質]する.
形容詞 /dɪdʒén(ə)rət/
1 ⦅かたく⦆堕落した, 悪化した; 退化した.
2 縮退[縮重]した.
censure /sénʃər/
動詞~s /-z/ ; ~d /-d/ ; -suring
他動詞
⦅かたく⦆〈権力者などが〉 «…のことで/…したとして» 〈人〉を非難[酷評]する; 譴責(けんせき)する «for/for doing»
▸ be censured for one's misconduct
不正行為により譴責を受ける.
名詞
UC⦅かたく⦆ «…に対する» 非難, 酷評; 譴責; 不信任 «on»
▸ pass a vote of censure on the Cabinet
内閣不信任案を通過させる.
矢内原忠雄訳: 27) それは非難を恐れる臆病にまで堕落した。
28
私の訳:スコットが愛国心について書いた(ところの)事のように義理について私なら言うだろう。つまり、それは最も美しいがそれと同時に、他の感情の仮面をつけていることもあり、しばしば最も疑わしいものである、と。
~と同じように…、~と同様[同時]に…
表現パターン(just) as ~, so
表現パターン(just) as ~, so
矢内原忠雄訳: 28) スコットが愛国心について、「それは最も美しきものであると同時に、しばしば最も疑わしきものであって、他の感情の仮面である」と書いていることを、私は義理について言いうるであろう。
29
私の訳:「義理」が正義の道理を超えて、あるいは、下方に運ばれたのなら、「義理」という言葉は驚くべき言葉の誤用に陥ったと言える。
beyond /bɪɑ́(ː)nd|-jɔ́nd/
〖by(…のそばに)yonder(向こうの)〗
「(…の)向こう側に, …を越えて」(↓前置詞1, 副詞1)の意が基本で, そこから, 時間水準領域(↓前置詞2, 3, 4)などについて用いられるようになった.
前置詞
1 〖方向〗…の向こう(側)に, …を越えて
▸ The village lies beyond the mountains.
その村は山の向こうにある(≒⦅よりくだけて⦆… lies on the other side of the mountains.↓類義)
▸ go beyond the borders of America and Canada
アメリカとカナダの国境を越える
below /bɪlóʊ/
〖by(…の近くに)low(低い)〗
「(位置が)…より低い位置に」(↓前置詞1, 副詞1)の意が基本で, 比喩的に「〈ある数量基準など〉より下で」(↓前置詞2, 副詞3), 「(地位階級などの点で)…より下で」(↓前置詞3, 副詞4)などの意で用いる. また, 下位であれば真下以外の位置にも対応する.
前置詞
1 〖位置〗(高低の位置として)…より下に[の, で], …より低い位置に, …の下方[流]に, …の階下に(→under類義; ↔above)
▸ a seat below the stage
舞台より下にある席
▸ a street below the window
窓の下にある道
▸ The sun sinks below the horizon.
太陽は地平線の下に沈む
▸ at two miles below the surface of the earth
地中2マイルのところに.
monstrous /mɑ́(ː)nstrəs|mɔ́n-/
→monster
形容詞more ~; most ~〖通例名詞の前で〗
1 (道徳上)あまりにもひどい, 極悪非道の; 途方もない
▸ a monstrous crime
極悪非道の犯罪.
misnomer /mɪ̀snóʊmər/
名詞
C誤称, (氏名の)誤記, 呼び誤り.
矢内原忠雄訳: 29) 「義しき道理」より以上もしくは以下に持ちゆかれる時、義理は驚くべき言葉の濫用となる。
30
私の訳:義理はその翼の下にあらゆる詭弁と偽善を抱え込んだ。
harbour /hɑ́ːrbər/
名詞動詞
⦅英⦆=harbor.
動詞
他動詞
1 (長期間ひそかに)〈悪意疑いなど〉を心に抱く
▸ harbor a grudge against A
A〈人〉に恨みを抱く.
2 〈場所が〉〈生物菌〉のすみかとなる.
3 …をかくまう; …に隠れ場所を与える.
自動詞
1 〈船が〉(港に)停泊[避難]する.
2 〈動物などが〉ひそむ.
sophistry /sɑ́(ː)fɪstri|sɔ́f-/
名詞複-ries⦅かたく⦆
1 C詭弁(きべん); こじつけ, へ理屈.
2 U詭弁法.
hypocrisy /hɪpɑ́(ː)krəsi|-pɔ́k-/ (!hy-は /hɪ/ ; 強勢は第2音節)
名詞複-sies
1 U偽善, 見せかけ.
2 C偽善行為.
矢内原忠雄訳: 30) それはその翼のもとにあらゆる種類の詭弁と偽善とを宿した。
31
私の訳:もし武士道が鋭敏で正しい勇気の感性を、あるいは、大胆で忍耐力のある精神を持っていなかったのなら、武士道は簡単に臆病の巣窟に成り下がってしまったであろうに(しかし、そうはならなかった)。
túrn into A
1 ↑自動詞5a.
2 (魔法などで)Aに変身する.
3 〈季節が〉A〈次の季節〉に移る
▸ Days [Months] turned into weeks [years].
(何かを待つ間に)時がゆっくり過ぎ去った.
túrn A into B
1 ↑他動詞5a.
2 (魔法などで)A〈人物〉をBにする, 変身させる.
3 Aの進路を変えてBに入る.
daring /déərɪŋ/
形容詞more ~; most ~
1 〈人行動が〉大胆な, 向こう見ずな, 勇敢な(bold)
▸ daring daylight robbery
大胆な白昼の強盗.
2 〈考えなどが〉思いきった, 斬新な; 衝撃的な(shocking); 〈服装が〉セクシーな
▸ a daring plan
斬新な計画.
名詞
U大胆(さ), 大胆不敵, 勇敢(さ)
▸ I admire his daring and ability to speak out.
率直に意見を言う彼の勇気と能力には感心する.
bearing /béərɪŋ/
→bear1
名詞複~s /-z/
7 U我慢, 忍耐(力).
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