2020年5月8日金曜日

武士道 第22講(改定)


原文
33) The writings of Confucius and Mencius formed the principal text-books for youths and the highest authority in discussion among the old. 

34) A mere acquaintance with the classics of these two sages was held, however, in no high esteem. 
35) A common proverb ridicules one who has only an intellectual knowledge of Confucius, as a man ever studious but ignorant of Analects. 

36) A typical samurai calls a literary savant a book-smelling sot. 

37) Another compares learning to an ill-smelling vegetable that must be boiled and boiled before it is fit for use. 

38) A man who has read little smells a little pedantic, and a man who has read much smells yet more so; both are alike unpleasant. 

39) The writer meant thereby that knowledge becomes really such only when it is assimilated in the mind of the learner and shows in his character. 

40) An intellectual specialist was considered a machine. 

41) Intellect itself was considered subordinate to ethical emotion. 

42) Man and the universe were conceived to be alike spiritual and ethical. 

43) Bushido could not accept the judgment of Huxley, that the cosmic process was unmoral.


現代英文訓読法で

私の訳:孔子と孟子の著作は若者にとっての大切な教科書となり、大人の間では議論の際の最高のよりどころとなった。

33) 矢内原忠雄訳: 孔孟の書は青少年の主要なる教科書であり、また大人の間における議論の最高権威であった。


私の訳:だが、この二人の儒家の古典を単に心得ている、というだけでは人から高い評価を受けることはできなかった。
esteem /ɪstíːm, es-/
名詞U
1 【人などに対する】尊敬, 敬意, 尊重 «for» (→self-esteem)
hold A in high [great] esteem
A〈人〉を大いに尊敬する
▸ a token of one's esteem
感謝[敬意]のしるし.
2 ⦅古⦆評価.

acquaintance /əkwéɪnt(ə)ns/ (!-ai-は /eɪ/ )
acquaint
名詞複~s /-ɪz/
1 C知り合い, 知人, 顔見知り, なじみ (!friendと違い, 強い信頼関係はない)
friends and acquaintances
友人知人
▸ business [casual, longtime, personal] acquaintances
仕事上の[偶然知り合いになった, 古くからの, 個人的な]知人
▸ an acquaintance of mine
私の知人(╳ my ~としない).
2 U【人との】面識, 付き合い, 交遊 «with» (!具体例ではan ~; その際しばしば修飾語を伴う)
▸ a person of one's acquaintance
知人
▸ On first acquaintance, he may seem strange.
初めて会ったら彼は奇妙に見えるかもしれない.
3 U⦅かたく⦆(学習体験などによって得た)【学問芸術などに関する】知識, 心得 «with»
▸ the students' acquaintance with Sartre
サルトルに関する学生の知識.

sage1 /seɪdʒ/
名詞
C⦅文⦆賢人, 哲人; 知恵[経験]の豊富な老人.
形容詞
⦅文⦆賢明な, 思慮深い, 経験に基づいた〈助言など〉.

esteem /ɪstíːm, es-/
名詞U
1 【人などに対する】尊敬, 敬意, 尊重 «for» (→self-esteem)
hold A in high [great] esteem
A〈人〉を大いに尊敬する
▸ a token of one's esteem
感謝[敬意]のしるし.
2 ⦅古⦆評価.
動詞~s /-z/ ; ~ed /-d/ ; ~ing
他動詞⦅かたく⦆ (!進行形にしない)
1 〖通例be ~ed〗 «…として» 尊敬[尊重]される «as»
▸ His advice ishighly esteemed.
彼の忠告は大いに尊重される.
2 ⦅古⦆〖~ A (as) C/A (to be) C〗A〈人物事〉をCであると思う, 見なす(consider, regard) (!Cは名詞形容詞) .

34) 矢内原忠雄訳: しかしながらこれら聖賢の古書を知っているだけでは、高き尊敬を払われなかった。


私の訳:よく知られたことわざ(論語読みの論語知らず)は、孔子の知識を持っているだけの人を、大した研究熱心であるが、文献バカのような人として嘲って(あざけって)いるのである。

ridicule /rɪ́dɪkjùːl/ (!強勢は第1音節)
〖語源は「笑う」〗
名詞
Uあざけり, 嘲笑, 冷やかし, からかい
an object of ridicule
物笑い[あざけり]の対象.
hòld Aúp to rídicule
A〈人など〉を冷やかす (!しばしば受け身で)
▸ John was held up to public ridicule.
ジョンはみんなの笑い物になった.
láy [léave] onesèlf òpen to rídicule
人の物笑いになるような事をする.
動詞
他動詞
«…(したと)のことで» 〈人考えなど〉をあざける, 嘲笑する, 冷やかす, からかう «for doing» .

studious /stjúːdiəs/
形容詞
1 勉強好きな, 学問[研究]に励む.
2 熱心な; 慎重な.

Analects
複数形》 (小文などの)選集.

ever /évər/
【強調】
4 〖比較級最上級の後で〗かつて, 今まで(); まさに (!最上級のほかにfirst, last, onlyなどを強調)
▸ You seem happier now than ever (before).
以前にも増して幸せそうだね
▸ It was the coldest ever winter [coldest winter ever] since records began.
観測史上最も寒い冬だった
▸ He is the greatest boxer that [who] ever lived.
彼は史上最強のボクサーだ(╳… that ever lived before. としない)
▸ She was the last [only] woman ever to talk with Dr. Einstein.
彼女はアインシュタイン博士と言葉を交わした最後[唯一]の女性だった.
5 ⦅米話⦆〖疑問形式の感嘆文で〗ひどく, たいそう(→what形容詞2文法)
▸ Was she ever angry!
彼女が怒ったのなんのって(≒ She was extremely angry.)
▸ “Do you like her?” “Do I ever!”
「彼女のこと好きか」「大好き!」(≒Yes, very much!).

ignorant /ɪ́ɡn(ə)r(ə)nt/ (!強勢は第1音節)
→ignore
形容詞more ~; most ~
1 〈人が〉 «…について» 無知の, 無学の «of, about» , (不勉強で)物を知らない
▸ They're totally ignorant of their rights.
彼らは自分たちの権利についてまったく知識がない.
2 〈行為などが〉無学を表している, 無知から起こる
ignorant attitude [remarks]
教養のなさを表す態度[言葉].
3 〖be ~〗 «…を/…ということを» 知らない, «…に/…ということに» 気づかない «of, about/that節»
▸ be ignorant of what the problem is
何が問題なのかわからない.
4 ⦅英くだけて⦆礼儀知らずの, 無作法な.


35) 矢内原忠雄訳: 孔子を知的に知っているに過ぎざる者をば、「論語読みの論語知らず」と嘲(あざけ)る俚諺(りげん)がある。


私の訳:ある典型的な侍(西郷隆盛のこと)は文学の大家を書物の盗(書物臭い大酒呑み)呼ぶ

savant /səvɑ́ːnt|sǽv(ə)nt/
〖<フランス〗
名詞
C⦅文⦆(特定分野の)大家, 大学者, 大科学者.

sot /sɑ(ː)t|sɔt/
名詞
C⦅やや古⦆大酒飲み, 飲んだくれ.

36) 矢内原忠雄訳: 典型的なる一人の武士(西郷南洲)は、文学の物識をば書物の盗と呼んだ。




37
私の訳:もう一人の人は学問を臭いにおいのする野菜に例える。つまりそれは食べられるようになる前に何度も煮られなければならない
compare /kəmpéər/
〖「com(共に)pare(対等にする)」>比較する〗
comparable, 形名comparative, comparison
動詞~s /-z/ ; ~d /-d/ ; -paring
他動詞
〈人が〉〈複数の人物事〉を比べる; 〖compare A with B/A to B〗AとBを比較する (!⦅コーパス⦆数値などの厳密な比較ではtoよりもwithが好まれる)
▸ Compare your answers with those of your classmates.
自分の答えをクラスメートのものと比べてみなさい
▸ compare prices
価格を比べる
▸ compare and contrast British and Japanese folk tales
イギリスと日本の民話を比較対照する.
〖compare A to B/A with B〗〈人が〉(質規模などにおいて)AをBにたとえるなぞらえるAとBが同じであると考える, 同等とみなす (!⦅コーパス⦆従来はtoが正しいとされてきたがwithも用いられる)
▸ The actress is often compared to Madonna.
その女優はよくマドンナに似ていると言われる.
〘文法〙〈形容詞副詞の語〉を比較変化させる.

learning /lə́ːrnɪŋ/
→learn
名詞
U学習学問; (学習を通じて得た)知識
▸ Attending a group project is a great [good] learning experience.
グループ研究への参加はいい勉強になる
▸ an institution of higher learning
高等教育機関.

fit1 /fɪt/
〖原義は「ある状態状況に適した」〗
形名fitting
形容詞~ter; ~test
1
a. 〈物などが〉 «状況目的などに/…するのに» 適したぴったりの «for/to do» (↔unfit→appropriate)
▸ The water isn't fit to drink.
その水は飲めたものではない
▸ This tool is fit for the task.
この道具はその仕事にはうってつけだ.
b. 〈人が〉 «状況目的などに/…するのに» 適任のふさわしい «for/to do»
▸ the fittest member of the team
チームの最適メンバー
▸ someone fit to do the job [for the job]
その仕事にふさわしい人.

37) 矢内原忠雄訳: また或る人(1三浦樹園)は学問を臭き菜に喰え、「学問は臭き菜のようなり、能く能く臭みを去らざれば用いがたし


私の訳:少しだけ書を読んだところの人は少しだけ学者臭くなる。たくさん書を読んだところの人はより一層そうなる。両者とも同様に不快なものである。

pedantic /pɪdǽntɪk/
形容詞
⦅けなして⦆〈人が〉規律にうるさい; 細かい; 学者ぶった.

alike /əláɪk/
形容詞more ~; most ~
〖be ~〗 «…の点で/人にとっては» 似ている, 同様である «in/to» (!名詞の前ではsimilarを用いる; →look自動詞3b類義)
▸ John and his father look very much [⦅くだけて⦆very] alike.
ジョンと彼の父親は瓜(うり)ふたつだ (!⦅コーパス⦆alikeの前にvery (much), pretty much, so (much)などの修飾語句が置かれることがある)
▸ No two stones are alike in color.
2つとして同じ色の石はない.
副詞
1 動詞の後で〗同じように
▸ My wife and I think alike on many things.
妻と私は多くの点で考えが同じだ
▸ treat them all alike
彼らをみな平等に扱う.

38) 矢内原忠雄訳: 少し書を読めば少し学者臭し、余計書を読めば余計学者臭し、こまりものなり」と言った。


私の訳:それ故にその作者の意図するところは知識が学習者の心の中に同化され、彼の性格に現れるようになった時にのみ、知識は本物になるということである。

assimilate /əsɪ́məlèɪt/
動詞~s /-ts/ ; ~d /-ɪd/ ; -lating
他動詞
1 ⦅かたく⦆(理解して)〈考え知識など〉を自分のものにする, 吸収する(absorb)
assimilate knowledge
知識をものにする.
2 «…に» 〈民族思想文化など〉を 同化する, 融合する(integrate) «into, to, with»
▸ The newcomers were assimilated into American society.
新来者たちはアメリカ社会に溶け込んだ
assimilate oneself to new surroundings
新しい環境になじむ.
3 «…に» …をたとえる «to, with» .
4 〈食物など〉を消化[吸収]する(digest).
5 〘音声〙〈音〉を同化する.
自動詞
1 ⦅米⦆ «…に» 同化[融合]する «into, to, with» .
2 〈食物などが〉消化[吸収]される.

thereby /ðèərbáɪ/
副詞⦅かたく⦆
1 〖しばしば~ doing〗それによって
▸ The company started mass production, thereby reducing costs.
その会社は大量生産を始め, それによりコストを削減した.
2 それについて[関して].
3 その近くに, その辺に.

39) 矢内原忠雄訳: その意味するところは、知識はこれを学ぶ者の心に同化せられ、その品性に現われる時においてのみ、真に知識となる、と言うにある。


私の訳:知的な専門家は機械であると思われていた

40) 矢内原忠雄訳: 知的専門家は機械であると考えられた。



41) 私の訳: 知識そのものは道徳的感情に従属するものと考えられた。
subordinate /səbɔ́ːrdɪnət/ (!形容詞名詞動詞で発音が異なるので注意)
〖sub(下位に)ordinare(置く)〗
形容詞
1 比較なし〈地位などが〉 «…より» 下位[下級](lower); 〈人が〉 «…に» 従属した(立場の); 付随する «to» (↔superior)
▸ a subordinate position
下位
▸ a subordinate officer
副官
▸ I believe women are not subordinate to men.
私は女性は男性に隷属していないと思っている.
2 more ~; most ~〈物事が〉【ほかの物事より】重要性が低い, 二次的な «to»
▸ a subordinate role
二次的役割.
3 〘文法〙従属の.

consider /kənsɪ́dər/ (!強勢は第2音節)
〖con(しっかりと) sider(星を観察する)〗
consideration, considerable, considerate, considerably, 前接副considering
動詞~s /-z/ ; ~ed /-d/ ; ~ing
他動詞
2 〖consider A (to be [as]) C〗A〈人物事〉をCと考える, 思う, 見なす (!Cは名詞形容詞分詞) ; 〖consider (that)節〗…だと考える; 〖~ A to have done〗Aを…したものと考える (!進行形にしない)
▸ Matsui is considered (to be [as]) a great player. ≒They consider Matsui (to be [as]) a great player. ≒They consider (that) Matsui is a great player.
松井は偉大な選手であると考えられている (!⦅コーパス⦆to beやasは受け身でよく用いられる)
▸ We consider it important to discuss the matter.
その件について議論をすることが重要だと考えています
▸ I consider myself lucky to be alive.
⦅話⦆生きていて幸運だと思う
▸ It is considered that ….
…と考えられている.

例文 This form should be considered obsolete.
    この形式は古いものと考えられている。

41) 矢内原忠雄訳: 知識そのものは道徳的感情に従属するものと考えられた。


42) 私の訳: 人間ならびに宇宙は等しく霊的かつ道徳的であると考えられた。

42) 矢内原忠雄訳: 人間ならびに宇宙は等しく霊的かつ道徳的であると思惟せられた。



私の訳:武士道は宇宙の進化は道徳的あるわけではないというハックスレーの断定を受け入れることはできなかった。

43) 矢内原忠雄訳: 宇宙の進行は道徳性を有せずとなすハックスレーの断定を、武士道は容認するをえなかったのである。

ハックスレーの断定:当時、進化論が一世を風靡していた。進化論には適者生存という説がある。これを敷衍すると、正しいものが生き残る、というような道徳観を帯びることがある。ハックスレーは進化論にも「適者生存」にも道徳性などないのだ、と説いた。これが、ハックスレーの断定である



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