2020年5月6日水曜日

武士道 第21講


原文
26) As to strictly ethical doctrines, the teachings of Confucius were the most prolific source of Bushido. 

27) His enunciation of the five moral relations between master and servant (the governing and the governed), father and son, husband and wife, older and younger brother, and between friend and friend, was but a confirmation of what the race instinct had recognised before his writings were introduced from China. 

28) The calm, benignant and worldly-wise character of his politico-ethical precepts was particularly well suited to the samurai, who formed the ruling class. 

29) His aristocratic and conservative tone was well adapted to the requirements of these warrior statesmen. 

30) Next to Confucius, Mencius exercised an immense authority over Bushido. 

31) His forcible and often quite democratic theories were exceedingly taking to sympathetic natures, and they were even thought dangerous to, and subversive of, the existing social order, hence his works were for a long time under censure. 



32) Still, the words of this master mind found permanent lodgment in the heart of the samurai.

現代英文訓読法で

私の訳:厳密に倫理的な教義に関して言えば、孔子(註)の教えが武士道のもっとも豊かな源泉となった。

註 孔子(551BC-479BC) 春秋時代の儒家の祖。名は丘、字は仲尼。青年期に修養を積み、魯国の国政に参与するが、のちに失脚して諸国を周遊する。『論語』はその死後、弟子たちの手によって成った言行録である。彼の教えは春秋、戦国時代を通じてすべての学芸思潮の基盤となり、伝統的な中国思想の根幹となった。

ás to A
1 ⦅かたく⦆Aについて, Aに関して(about); 〖文頭で〗Aはといえば (!前出の話題に関連して新しい話題を導入する) (↑as for A)
▸ I didn't have a clue as to what was going on [how to do that].
どうなっているのか[それをどうやってやるのか]さっぱりわからなかった.

prolific /prəlɪ́fɪk/
形容詞
1 〈作家音楽家が〉多作の; 〈経歴などが〉功績の多い; 〈植物が〉実りの多い; 〈スポーツ選手が〉得点力のある.
2 〈動物植物が〉多産の; 繁殖力のある.
3 〈川などが〉肥沃な.
4 ⦅かたく⦆〖通例be ~〗 «…に» 富む «in, of» ; 数の多い.


26)矢内原忠雄訳: 厳密なる意味においての道徳的教義に関しては、孔子の教訓は武士道の最も豊富なる淵源であった。


私の訳:五つの倫理的な関係について孔子が述べた事は、すなわち、主人と召使い(あるいは統治する者と統治される者)、父子、夫婦、兄弟、 朋友の関係は、彼の著作が中国から紹介される以前から、日本人の本能が認知していたことの確認にすぎない。

enùnciátion
名詞U
1 発音(の仕方).
2 ⦅かたく⦆(考えなどの)発表, 言明.

27) 矢内原忠雄訳: 君臣、父子、夫婦、長幼、ならびに朋友間における五倫の道は、経書が中国から輸入される以前からわが民族的本能の認めていたところであって、孔子の教え一はこれを確認したに過ぎない。


私の訳:孔子の政治道徳の教訓の温和で慈悲深く世智に長けている性質は、統治階級を形成していた侍に特によく適合した

benignant
1 慈悲深い、優しい
2 有益な、ため[プラス]になる◆【類】beneficial
3 《医》良性の◆【対】malignant


wòrldly-wíse /⦅強勢移動⦆/
形容詞
〈人が〉世知にたけて, 世渡りのうまい, 世慣れた.

precept /príːsept/
名詞C⦅かたく⦆
1 〖しばしば~s〗(判断行動などの拠(よ)り所となる)原理, 原則; 指針; 格言.
2 〖通例~s〗(宗教的道徳的な)教え; 教義
▸ the ten precepts
十戒.
3 〘法〙令状; ⦅英⦆納税支払命令書.
4 (技術的操作の)指示.

28) 矢内原忠雄訳: 政治道徳に関する彼の教訓の性質は、平静仁慈にしてかつ処世の智慧に富み、治者階級たる武士には特に善く適合した。



私の訳:彼の貴族的で保守的な語調は武士の政治家の要求によく適合した

aristocratic /ərɪ̀stəkrǽtɪk|æ̀rɪs-/ /⦅強勢移動⦆/
形容詞more ~; most ~
1 貴族の; 上流階級の; 貴族政治の.
2 貴族的な, 貴族趣味の; 上品な[ぶった].

tone /toʊn/
〖語源は「緊張, 張ること」〗
名詞複~s /-z/
1 C〖しばしば~s〗(話し手の感情を表す)口調, 語調, 語気, 話し方
▸ in a sharp [friendly] tone
鋭い[優しい]口調で
▸ His tone was icy.
彼の口調は冷たかった


29) 矢内原忠雄訳: 孔子の貴族的保守的なる言は、武士たる政治家の要求に善く適応したのである。



私の訳:孔子に次いで孟子(註)が武士道に大きな権威を及ぼした。

註  孟子(伝372BC-2898C)戦国時代都国の人。名は朝、字は子輿。孔子の教えを維承しつつ、人間の天性の資質を善とする立場にたち、仁政が行われることを君子の義務とした。孔子と並んで中国思想の根幹とされるが、その急進的な仁政論は時には排斥された。

immense /ɪméns/
〖im(打ち消し)mense(計ることができる)〗
形容詞more ~; most ~
〈場所物などが〉(計り知れないほど)広大な, 巨大な; 〈程度量などが〉膨大な, 計り知れない(enormous); ⦅くだけて⦆すばらしい, すごい
immense pressure
とてつもない重圧
▸ an immense amount of time
膨大な時間.

exercise /éksərsàɪz/ (!ex-は /eks/ ; 強勢は第1音節)
〖語源は俗説で「家畜を外へ追い出して動かす」〗
動詞~s /-ɪz/ ; ~d /-d/ ; -cising
自動詞
運動をする, 練習をする
▸ I exercise every day in the gym.
私は毎日ジムで運動をしています.
他動詞
1 〈運動が〉〈体筋肉など〉を鍛える; 〈人が〉〈体の一部動物など〉を運動させる (!具体的な種目を練習する場合にはpracticeを用いる)
▸ Swimming exercises your whole body.
水泳は体全体を鍛える
exercise the [one's] arms and legs
手足を運動させる
exercise a horse
馬を運動させる.
2 ⦅かたく⦆〈人が〉〈精神力など〉を働かせる, 用いる; 〈権利など〉を行使する; 〈職務など〉を遂行する
exercise care [intelligence]
注意力[知力]を用いる
exercise one's rights to vote
投票する権利を行使する.
3 ⦅かたく⦆ «…に» 〈影響など〉を与える, 及ぼす «over, on»
exercise control over the work
仕事を統制する.
4 ⦅かたく⦆〈物事が〉〈人(の心)〉をわずらわす, 悩ませる; 〖be ~d〗〈人が〉 «…のことで» 気をもむ, 心配する «about, over»
be greatly exercisedabout one's health
健康をひどく心配する.

30) 矢内原忠雄訳: 孔子に次いで孟子も、武士道の上に大なる権成を振った。



私の訳:彼の説得力があってしばしばまったくの人民主権的な理論は共鳴する気質を持つ人々に大変に好まれた。彼の理論は現存社会秩序にとって危険であり反政府的であると考えられた。それ故、彼の著作は長い間と禁書扱いなった。

forcible /fɔ́ːrsəb(ə)l/
形容詞〖名詞の前で〗
1 暴力による, 力ずくの, 強制的な
▸ a forcible entry
不法侵入.
2 力強い, 効果的な〈表現など〉; 説得力のある〈議論など〉.

exceedingly /ɪksíːdɪŋli/
副詞
⦅やや古⦆〖通例形容詞の前, 動詞の後で〗非常に, たいそう(very much).

táke to A (!受け身にしない)
1 (特に初めて会って[行って])A〈人場所〉が好きになる, Aになじむ, Aに引かれる(↔take against A).
2 (習慣として)Aを始める, A(するの)が習慣になる (!Aは名詞動名) ; A〈飲酒麻薬など〉を始める.
3 (初めてやるのに)A〈事〉が好きになって上達する.
4 (ある目的で)A〈場所〉へ行く, A〈…路〉を行く; (危険を避けるため)Aへ逃れる
take to the streets
街頭デモを行う.

exceedingly /ɪksíːdɪŋli/
副詞
⦅やや古⦆〖通例形容詞の前, 動詞の後で〗非常に, たいそう(very much).

sympathetic /sɪ̀mpəθétɪk/ /⦅強勢移動⦆/ (!強勢は第3音節)
→sympathy
形容詞more ~; most ~
1 【人などに対して】同情的な, 思いやりのある «to, toward»
▸ I am sympathetic to him [his problem].
私は彼に同情する[彼の抱える問題が理解できる]
▸ lend [provide] a sympathetic ear to the troubled
困った人の話に耳をかたむける.
2 〖be ~〗【人提案などに】共感して, 共鳴して, 好意的で, 賛成で «to, toward»
▸ Sam was sympathetic to my idea.
サムは私の考えに共感してくれた.
3 最適な, 好条件の
▸ in a sympathetic atmosphere
最適な雰囲気で.
4 〘生理〙交感神経の; 〘物理〙共鳴[共振]による.
~̀ cháracter [fígure]
読者の心を引き付ける登場人物.

nature /néɪtʃər/
〖natal(生まれる) ure(こと)〗
natural, naturally
名詞複~s /-z/
1 U自然, 自然物, 自然界; 自然[原始]状態 (!theは付けない)
▸ the wonders [beauty] of (╳the) nature
自然の驚異[美しさ] (!⦅コーパス⦆後者はnatural beautyと表現されることが多い)
▸ materials never existing in nature
自然界には決して存在しない物質
▸ a nature lover
自然愛好家.
2 U自然の力[作用]; 〖しばしばN-〗自然の女神, 造物主(Mother Nature) (!theは付けない)
▸ The forces [laws] of nature cannot be controlled.
自然の力[法則]は制御できない
Nature is cruel.
自然は残酷である
▸ The disease could be nature's way of telling him to lose weight.
病気は彼に体重を減らせと告げる自然の術なのかもしれない.
3 UC(生まれつきの)性質, 本性, 天性, 性向, 気質
▸ appeal to one's better nature
人の親切心に訴える
▸ It's not in my nature to be patient.
我慢するのは僕の性に合わない.
4 UC〖単数形で; しばしばthe ~〗(物事の)本質, 特質
the true nature of the problem
その問題の本質
▸ study the nature of the Universe
宇宙の本質を研究する.
5 UC〖単数形で〗種類, 種別
▸ A lecture of that nature is too difficult for me.
ああいった話題の講義は僕には難しすぎる
▸ questions of a personal [technical] nature
個人[専門]的内容の質問.
6 U⦅遠回しに⦆生理的欲求 (!排泄(はいせつ)行為をさす)
▸ answer the call of nature
用を足しに行く.

subversive /səbvə́ːrsɪv/
形容詞
〈活動思想芸術作品などが〉反政府[反体制]的な, 【政府体制などを】転覆[破壊]しようとする «of» .

censure /sénʃər/
動詞~s /-z/ ; ~d /-d/ ; -suring
他動詞
⦅かたく⦆〈権力者などが〉 «…のことで/…したとして» 〈人〉を非難[酷評]する; 譴責(けんせき)する «for/for doing»
▸ be censured for one's misconduct
不正行為により譴責を受ける.
名詞
UC⦅かたく⦆ «…に対する» 非難, 酷評; 譴責; 不信任 «on»
▸ pass a vote of censure on the Cabinet
内閣不信任案を通過させる.

hence /hens/
副詞比較なし⦅かたく⦆
1 〖文修飾〗従って, それゆえに(→therefore読解のポイント) (!しばしば後続部分の動詞が省略される)
▸ Bill was very sleepy, hence the accident.
ビルはとても眠たかった, それゆえその事故が起こった.
2 〖期間を表す語の後で〗これ[]から, 後に
▸ eight days hence
8日後に.
3 ⦅古⦆〖時にfrom ~〗ここから; この世から.


31) 矢内原忠雄訳: 孟子の力強くしてかつしばしばすこぶる平民的なる説は同情心ある性質の者には甚だ魅力的であった。それは現存社会秩序に対して危険思想である、叛逆的である、とさえ考えられて、彼の著書は久しき間禁書であったが、



私の訳:それにもかかわらずこの賢人の心の言葉は侍の心の中に永久に降り積もって蓄積したことが分かる

still1 /stɪl/
〖原義は形容詞1〗
2 〖譲歩〗
a. (前言の内容は確かに事実ではあるが)それでも, それにもかかわらず(⦅よりかたく⦆nonetheless) (!(1)動詞の前で, または文頭で接続詞的に. (2)対照の詳細は→but読解のポイント(2))
▸ Robert did his best, but he still failed in the exams.
ロバートはベストを尽くしたのに試験に落ちた
▸ She turned down his marriage proposal twice. Still, he didn't give up.
彼女は彼のプロポーズを2度断ったが, それでも彼はあきらめなかった (!しばしば前言では問題点や困難な状況が述べられ, still以下でそれに対する対処や, 前言を話し手がそれほど深刻にとらえていないことが示される) .

lodgment /lɑ́(ː)dʒmənt|lɔ́dʒ-/
名詞⦅かたく⦆
1 U宿泊; C宿泊所.
2 C堆積物, 詰まった物; U堆積, 詰まる[引っかかる]こと.
3 U(苦情などの正式な)申し立て.
4 C〘軍〙占領; (敵地に得た)拠点, 足場.

32) 矢内原忠雄訳: それにかかわらず、この賢人の言は武土士の心に永久に寓(やど)ったのである。

音読み:グウ・ グ
訓読み:よせる・ やどる・ かりずまい・ かこつける




現代英文訓読法 目次 (新渡戸稲造 武士道もここにあります)



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