多くのハッカーが個人情報を得るために狙っているし、病院側はあまりにも無防備。
多くの病院で多くの職員が、電子カルテを稼働させているコンピューターでインターネットを行い、ダウンロードなどもしている。
ここにつけ込まれたら、ハッカー達のおもうがママである。
https://www.miekinen.org/2016/05/09/電子カルテは危険-米国のニュースより/
こんにちは。
上の写真は米国のある医療機関のオフィスに貼られていたという掲示で、
YOUR PRIVACY IS PROTECTED (あなたのプライバシーは守られています)
WE DO NOT USE ELECTRONIC MEDICAL RECORDS
(私たちは電子カルテを使用していません)
と、書かれています。米国では、昨年から病院のコンピュータシステムにハッキングして個人情報を盗んだり、診療を妨害したり、ウイルス感染解除のためのパスワードを教える代わりに金銭(電子マネー)を要求したりという事件が後を絶たずに社会問題となっているそうです。今年の3月に入ってから、『ランサムウェア』というコンピュータウイルスの感染が広がり、カナダのオタワ病院、米国ハリウッドPresbyterian病院、メソジスト病院、ワシントンDCの MedStar Washington 医療機関グループに所属する多くの病院や診療所が被害を受けて、診療に甚大な支障が生じたとのことでした。これまでもコンピュータウイルスの発生と対策は常にイタチごっこでしたが、特に医療機関に対するハッキングが急速に進化していることへの警鐘が鳴らされています。以下の報道記事をご参照下さい。
Chicago Tribune 2016年3月29日『Washington-area MedStar hospital chain paralyzed by hackers' virus attack』(←CBSのニュース動画もあります)
患者さんの医療情報は『究極の個人情報』と言われています。確かに電子カルテは便利ですが、外部からのハッキングの脅威をはじめ、内部からも大規模な情報流出のリスクがあるという構造的な欠点があります。特に医療現場での電子化は、金融や軍隊などの公的機関とは異なり、より多様で多数のスタッフ間で情報共有されるので、ハッカーから与しやすい攻撃対象(ソフトターゲット)として狙われやすい傾向もあるそうです。
日本では今、病院記録の電子化に向かってさまざまな施策が行われていますが、近い将来米国と同じ状況になる可能性もあり、十分な注意が必要と思います。ちなみに米国の病院での電子カルテ普及率は平均74%(米国CDC 2014年報告)、日本は平均22%(200床未満で14%:厚生労働省2011年報告)だそうです。
なお当院では『プライバシーが守られる』紙カルテを使用しています(※国の政策に従って医事会計システムは電子化しております)。私は大学病院で電子カルテが新設された際の最初の世代(40歳代後半^^;)になりますが、3年前に当院に赴任して紙カルテを久しぶりに使用して、『書いて伝えることの意義』を改めて実感できた気がします。また、看護師さんをはじめ、当院のスタッフのほとんどが美文字であることにも感謝しています。以前、米国の大学病院に留学した時に、医療スタッフのアルファベット文字が本当に汚くて読みづらいので、カルテを電子化していないと大変だろうなあと実感しました(^^;)。日本でも乱筆の方はおられますが、漢字を含む日本語の文字は文書の運用面で優秀だと思います。Twitter の文章を相手に応じて英語と日本語で書くときに気が付いたのですが、140文字では日本語の方が少ない文字で英語より圧倒的に多くの情報を伝えることができます。
あくまで私見ですが、当院のような規模の病院では紙カルテで運用上問題はなく、将来、全ての医療機関のカルテを国が責任をもってクラウドで管理する時代が来るまでは、紙カルテの方が安全性やコスト面で有利だと思っています。現在は日本も米国も多くのベンダー(製作会社)が独自に電子カルテを開発しているので統一性や一貫性がない上に、Windows XP 問題のような大規模なシステム変更が不定期に生じることで安全対策やメンテナンスの費用が膨張しています。またコンピュータ入力支援のために医師や医療者に付き添うクラークの人手が新たに必要となることを併せて、さらに医療費が増加する恐れがあることが課題でしょう。。。
(文:森本)